小児歯科
Pediatrics

健やかな口腔発達を育むための
口腔育形成
当院ではお子さんのお口の正常な発達を促すため、口腔育形成を行っています。
顎の発達が充分でないまま永久歯が生えてきてしまうと、スペースが足りず歯並びや噛み合わせの乱れに繋がります。
早いうちから口腔育形成を始めることで、将来の健康な口腔環境をつくるサポートをします。
正しい抱っこの仕方

赤ちゃんの首がすわるまでは、長時間の縦抱きは避けましょう。縦抱きが早すぎると、腹筋や背筋に過剰な力がかかり、体の緊張や反り返り、硬さの原因となることがあります。また、頭が後方に反らないように注意し、赤ちゃんが口を閉じて鼻呼吸をしているかを確認してください。この時期の抱き方が不適切だと、口呼吸や歯列不正の原因になることもあります。さらに、赤ちゃんを抱っこする際は、同じ向きばかりにならないよう、左右均等に向きを変えることを心がけましょう。
授乳についての注意点

授乳は赤ちゃんの舌やほっぺの筋肉をしっかりと使わせることが大切です。赤ちゃん自身が自分の力で乳首をくわえるよう促しましょう。哺乳瓶でミルクを与える場合でも、同様の注意が必要です。浅く咥えてしまうと、赤ちゃんがしっかり吸えず、適切な口腔発達を妨げる可能性があります。授乳時には、赤ちゃんが乳首をしっかりと奥まで咥え、効率よく吸えるよう工夫してください。
断乳の時期と進め方

断乳は1歳を過ぎた頃から開始し、1歳半を目安に終えることが推奨されます。断乳を進める際には、まず離乳食をしっかり食べられるようにサポートしましょう。また、授乳以外で強い親子の絆を築くことが断乳の成功につながります。断乳を決めたら、2–3日は寝る前や夜間のみの授乳にし、その後はパートナーに寝かしつけを任せるなどの方法も効果的です。また、泣いたら授乳する、寝ながら飲ませるといった習慣は断乳を妨げるため、徐々に改善していきましょう。
コップ・ストローで飲む練習

断乳を始める頃(生後8カ月頃)には、コップで飲む練習を始めましょう。これは唇の機能を正常に発達させるために非常に重要です。ストローを使うことも有効ですが、最終的にはコップを使えるようサポートしてあげてください。少しずつ練習を重ね、赤ちゃんが自然に飲む力を身につけられるようにしましょう。
離乳食と口腔機能の発達

離乳食は食べる機能や話す機能を育む大切なステップです。特に口の周りの筋肉をしっかり使って食事をすることが重要です。スプーンを使う際には、親が口の中に押し込むのではなく、子ども自身が唇で食べ物を取る動きを促しましょう。そのためには、スプーンを水平に抜き取るよう意識してください。また、食事を急がせず、子どもが自分のペースで食べられる環境を整えることも大切です。こうした取り組みにより、健やかな口腔機能の発達をサポートすることができます。
口腔機能発達不全症
について

先天的な問題がないお子さんでも、噛む、飲み込む、話す、呼吸するといった基本的な口腔機能が十分に育たない場合があります。これを口腔機能発達不全症と呼びます。口腔機能発達不全症を防ぐには、離乳食が始まる頃から顎や舌が適切に使えるようにサポートしていくことが重要です。
機能不全の種類
-
食べる
食事は、口に入れる・噛む・飲み込むという工程を連携して行います。どれか一つでもうまくいかないと、誤嚥の危険が高まったり、特定の食感を避けるようになったりします。
-
話す
小児期に「サ行がタ行に聞こえる」「特定の音だけがはっきりしない」などの症状が続く場合、舌の位置や歯の生え方が関係しているかもしれません。当院では、耳鼻科と連携して原因を探るケースもあります。
-
呼吸
鼻から空気を取り入れると加湿や温度調節が行われ、外部からの病原体をある程度防ぎやすくなります。一方で口呼吸が習慣化すると喉が乾燥しやすくなり、むし歯や歯周病を引き起こす菌が繁殖しやすい状況になってしまうのです。
口腔機能発達不全症に
気付くために
お子さん自身は、舌の位置や呼吸の仕方に関して「おかしい」と思わないケースがほとんどです。また違和感を訴えることもほとんどありません。そのため、日々の様子をそばで見守っている保護者の方が違和感に気づく必要があります。普段から口が開いている、舌先の位置が落ちているなどの特徴があれば、一度当院までご相談ください。
口腔機能訓練(MFT)について

当院ではお子さんの顎や舌、歯の発育をサポートするため、口腔筋機能療法(MFT:Oral Myofunctional Therapy)を取り入れています。
MFTは、噛む・飲み込む・発音・呼吸などの際に舌や唇が適切に動くよう訓練を行う方法です。指しゃぶりや舌癖などの習慣がある方は、MFTを続けると口や舌を取り巻く筋肉のバランスが整いやすく、歯並びや発音にも良い影響が期待できます。簡単なエクササイズが中心なので、ぜひ日々の習慣に取り入れてみてください。
唇と舌が正しい姿勢位にないと、どうなる?

日常的にお口がポカンと開いていたり、舌先が上の歯や下の歯に常に触れていたりすると、歯並びが乱れやすいだけでなく、次のような問題に繋がります。
- 話すときにもごもごして聞こえたり、言葉につまりやすくなったりする
- 食べ物を噛むとき、周りに聞こえるような音が出やすくなる
- 眠っている間の息づかいが荒くなり、いびきをかく傾向が強まる
- 鼻ではなく口で息をする習慣がつき、病気の菌やウイルスが入りやすい
- 口の中が潤いを失って乾燥し、気になる息の匂いの原因になる
- 歯を支える歯ぐきの健康が損なわれ、歯茎のトラブルが起きやすくなる
口腔機能訓練(MFT)の
メリット
- 矯正装置の治療効果を最大限に引き出し、治療後の歯並びの戻りを防げる
- 顔周りの筋肉のバランスが整い、より自然で魅力的な表情や笑顔が生まれる
- 食事中の音が減り、より上品な食べ方が身につく
- 食べ方がきれいになる
- 言葉の発音がクリアになり、人前での会話に自信が持てるようになる
- 顎や口の正しい発達を促し、健やかな成長をサポートできる
※できるだけ早い段階で問題を見つけ、治療の方針を決めることが大切です。気になる症状があればお気軽にご相談ください。
小児歯科の予防メニュー

フッ素塗布
乳歯の歯質は永久歯に比べて未発達です。そのためむし歯になりやすく進行も早い傾向にあります。フッ素には歯質を強化する成分が含まれており、定期的に塗布すれば、効果的なむし歯予防が可能です。
当院では、中学生くらいまでのお子さんにクリーニング後フッ素塗布を行っています。

シーラント
シーラントは、歯科用プラスチックを歯の表面に流し込み、溝を埋める処置です。食べかすや細菌が入り込みにくくなるため、歯質の弱い乳歯や永久歯(特に6歳臼歯)を保護する効果があります。むし歯予防に非常に有効な方法です。

歯磨き指導
当院では、お子さんの成長段階に合わせた正しい歯磨き指導を行っています。歯と歯の間や奥歯など、磨き残しが多い部位をお伝えし、適切に歯を磨けるようにわかりやすくアドバイスいたします。また、保護者の方による仕上げ磨きの方法もレクチャーいたします。お子さんの歯の健やかな成長を、一緒にサポートしていきましょう。
年齢別の注意点
0歳時の注意点
平均6~7ヶ月で初めての歯(下顎中切歯)がはえてきます。
-
歯磨きのポイント
歯が1本でもはえてきたら歯磨きを開始するのが理想ですが、せめて哺乳後・食事後に湿したガーゼで歯面を拭うか、哺乳瓶にさ湯を入れておいて飲ませましょう。
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食事のポイント
- 離乳食開始の目安は5ヶ月・7キロ。
- 離乳食は薄味にしましょう。乳児期から味の強いものを与えると濃い味しか受け付けなくなります。
- とくに砂糖で調味しないこと。
- 親が食物を噛み砕いて与えるようなことは避けるべきです。S.mutans(むし歯菌)を伝播します。
1歳時の注意点
1歳半をすぎると奥歯がはえてきます(第1乳臼歯)。
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歯磨きのポイント
歯が1本でもはえてきたら歯磨きを開始するのが理想ですが、せめて哺乳後 ・食事後に湿したガーゼで歯面を拭うか、哺乳瓶にさ湯を入れておいて飲ませましょう。
-
食事のポイント
- 1歳をすぎたら断乳を開始します。1歳半までには必ず終えているようにしましょう。
- 哺乳瓶の使用を止め、コップに切り替える。
- 飲み物はお茶・水・牛乳を与え、嗜好飲料(ジュース・乳酸飲料・炭酸飲料・スポーツ飲料)は控えましょう。とくに就寝時や夜中に起きた時には嗜好飲料は絶対与えないように。
2・3・4歳時の注意点
2歳半~3歳で乳歯が完全にはえそろい、噛み合わせが安定します。乳歯のむし歯が増加しはじめるのもこの頃です。
歯磨きのポイント
- 子どもにも歯ブラシを持たせる習慣をつけましょう。少なくとも就寝前には丁寧な仕上げ磨きをしてあげましょう。
- 乳臼歯の歯間が狭くなってきて、隣接面カリエスの心配がでてくるので、フロスの使用を習慣化しましょう。
5・6歳時の注意点
6歳臼歯がはえてきます。
歯磨きのポイント
- 子どもに正しい歯口清掃法(歯磨き・フロス)を教え始め、自立できるよう指導・ 訓練しましょう。
- 6歳臼歯がはえてきたら、歯ブラシを斜めにいれて特別に1本だけ磨きましょう。
- 6歳臼歯について認識させ、かならず仕上げ磨きをしてあげてください。
6歳臼歯について

6歳臼歯は6歳頃にはえてくるので、6歳臼歯と言われています。正しくは第一大臼歯といいます。
この歯は一番大きくて噛む力も最も大きく、噛み合わせの中心となり歯並びの基礎となります。反面、最もむし歯になりやすいのです。
6歳臼歯がむし歯になりやすいわけ
- 乳歯と抜けかわらず乳歯の奥にはえるため、はえはじめに気づきにくい。
- はえるまでに3~6ヶ月ぐらいかかる。(かぶさった歯肉の下にものがつまりやすく歯磨きがしづらい。)
- 奥にはえるため歯磨きしにくい。
- 歯の噛み合わせの面(咬合面)のみぞが複雑。
- はえてすぐの歯は、とても質が弱く抵抗性がない。
6歳臼歯の磨き方
6歳臼歯は完全にはえるまでは、乳歯より高さが低いため、普通に磨くとうまくみがけません。小さめの歯ブラシを斜めから入れて6歳臼歯だけを特別に磨くようにしましょう。ちょこんと白い歯がみえたら歯磨き開始!
歯ブラシの毛先を歯面にきちんとあてて、小さく前後に動かします。まだ子どもでは磨くのが難しいので、必ず仕上げ磨きをしてあげてください。
6歳臼歯の予防
- フッ素の塗布
- はえたての歯にはよりフッ素が有効です。
- シーラント
- シーラントとは、歯の溝にプラスチックのような樹脂を流し込み、歯垢が歯の溝に溜まるのを防ぎ、むし歯になりにくくする処置です。6歳臼歯は溝が複雑なので、シーラントがとくに効果的。咬合面が全部出たらすぐにするのが効果的です。
キシリトールとは

多くの果物や野菜にも含まれ、生体内でも作られます。
白樺やトウモロコシの穂軸等に含まれる、キシランを原料に作られている天然素材甘味料ショ糖とほぼ同じ甘味を持ち、カロリーは75%程。大量に摂取すると、一過性の下痢を起こします。
キシリトールの効果
- キシリトールはミュータンス菌に代謝されないため、「酸」を生成できない。よってpHも低下させない。
- 不溶性グルカンが作れないので歯垢(プラーク)が落ちやすい。歯垢自体減少する。
- 代謝できないので、ミュータンス菌の活性が弱まり減少する。
- 唾液量が増えるので、エナメル質を再石灰化させる。
キシリトールはむし歯の原因にならないですし、唾液料の増加でエナメル質の再石灰化による予防効果も期待できますが、あくまで食品なので過度な期待は禁物です。最近では、ハイドロキシアパタイトなど再石灰化を促進する物質の含有されたキシリトールガムなども販売されているので、興味のある方はご相談ください。
子どものむし歯は
進行が速いので注意

小児のむし歯は成人と比べ短期間で発生し、進行が速く少し油断すると歯の神経まで到達してしまいます。大切なことは、かかりつけの歯医者を決め、定期的に歯科健診に出向き、ブラッシング指導やむし歯予防処置などを受けることです。
定期健診の間隔は3~4ヶ月程度がよいでしょう。むし歯ができてから歯医者に行くのではなく、むし歯が無い状態からの健診が理想的です。
おやつは
もう一回の食事です

子どもは1回の食事量が少ないので、3回の食事ではエネルギーが不足するので間食を与えます。間食は“甘食”でありません。もう一回の食事と考えましょう。
間食を与える際の注意
- 砂糖の少ないものを与えるようにする。砂糖添加量の多いジュース類や乳酸飲料・炭酸飲料・スポーツドリンクは与えない。
- 歯に粘着性の強い食品や長時間口腔内に停滞しやすい食品を避ける。
- 間食後、お茶・水・牛乳などの飲み物を与え、口腔内に長時間停滞しないようにする。
- 間食を与えた後必ず歯磨きをする。
- 定めた時間に定めた量与える。頻度を多く与えない。就寝前や食事前には与えない。
おやつの種類
- 甘味の強くないもの
- 食事に近いもの
- 果物・野菜のように水分が多く、ビタミン・ミネラルの多いもの(食物残渣の清掃性も高い)
- 消化がよく、胃内に停留する時間が短く、次の食事の妨げとならないもの
- 容積が大きく、満腹感を与えるもの
- 牛乳・麦茶のように水分補給のできるもの
- かみごたえのあるもの
おやつとして適当な食品
- 果物・野菜類
- 牛乳・乳製品(ヨーグルト・チーズ等)
- 軽い薄あじの穀物類(パン・せんべい)
- いも類・豆類(さつまいも・じゃがいも・くり・そら豆・枝豆)
※ただしあまり幼児にピーナッツ類を与えるのは誤嚥の恐れがあるので与えない方がいい
よい歯を作る食品表
良質たんぱく室 | ビタミンA | ビタミンC | カルシウム | リン | ビタミンD | |
---|---|---|---|---|---|---|
働き | 歯の基礎となる | エナメル質の土台となる | 象牙質の土台となる | 歯の石灰化を助ける | 歯の石灰化を助ける | カルシウムの代謝を助ける石灰化の調整 |
主な食品 | あじ 卵 牛乳 とうふ など |
豚 レバー ほうれん草 人参 バター など |
ほうれん草 みかん さつまいも にんじん |
ひじき チーズ しらす干し など |
米 牛乳 豚肉 卵 など |
バター 卵黄 牛乳 など |
スポーツドリンクとむし歯

だらだら飲むとむし歯のもと
スポーツドリンクはスポーツをして汗をかいた後に水分を早く補ってくれますが、糖分の補給のためにブドウ糖などもたくさん加えられています。そのうえpHが4ぐらいと低いため、むし歯をつくりやすいのです。
けれども、小児科では発熱・脱水症状があるときなど、水分補給のためにすすめられることがあるので、健康飲料というイメージが強く、「ジュースを飲むよりいいのでは」と元気なときにも日常的に飲ませていると当然むし歯の原因になります。
とくに、1歳前後の乳幼児に哺乳瓶で飲ませている場合、重篤なむし歯になることがあります。
哺乳ビンむし歯

子どもを寝かしつけるため哺乳瓶にミルクや乳酸菌飲料・スポーツドリンク等を入れて毎晩飲ませると上の前歯を中心にひどいむし歯ができます。
これを哺乳瓶むし歯(ボトルカリエス)といいます。
- 症状
- 最初は上の前歯の表面が白濁して、そのときは裏側はすでに茶色のむし歯になっておりそのまま習慣を続けると、神経がうんでしまうほどに重症になることがあります。
- 原因
- 幼児期の歯は表面構造が未成熟で脱灰されやすい。哺乳瓶で飲むと、長時間飲料類が歯面に接します。
また飲んだ後そのまま寝ると唾液の分泌がほとんどなくなり自浄性もなくなるので歯が脱灰をおこし、むし歯は急性、広範性に進みます。
母乳でも同じ
おっぱいを吸うときは上唇が動きません。またおっぱいを飲ませるのは、ほとんど寝かせるときの手段として使われるので、夜そのまま寝てしまうと、乳糖が上の歯へベタッとついたまま流れないので、同じような症状が起こりうるのです。
お子さん連れでも
安心して通院できる歯科医院

当院は、お子さんが退屈しないようにキッズスペースやチャイルドシートをご用意しております。保護者の方が治療を受けている間も、お子さんの様子を見守りながら進められる環境です。お口のケアで気をつけるポイントや、毎日のケア方法についても丁寧に説明いたします。ご家族一緒に気軽に通える歯科医院を目指しておりますので、お子さんを連れての通院が不安な方も遠慮なくお申し付けください。
お子さんのいる方へ